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時代に取り残される運送業界 〜「ネット戦略なき経営」の限界〜

物流は社会インフラのひとつだ。物が届かないだけで、社会は簡単に混乱する。にもかかわらず、いまだに多くの運送業者が「時代に取り残されつつある」と感じる。その理由は明白だ。デジタル化・ネット戦略を取り入れずに旧来のやり方に固執している企業が、驚くほど多いからだ。

物流の最前線では、自動運転やAI、ロボットといった技術革新の話題が飛び交っている一方で、現場では「FAXで受注」「求人はハローワークだけ」「ホームページは10年前から更新なし」…といった光景が珍しくない。

このままで本当に、持続的に事業を続けていけるのだろうか?

目次

「ドライバーがいない」本当の理由

まずは人材問題。運送業界の人手不足はもはや慢性化している。しかし、その原因を「若者が働きたがらない」「きつい仕事だから」とだけ片づけるのは浅い。多くの若者は、ネットで情報収集し、自分の働く会社を吟味している。にもかかわらず、多くの中小運送会社にはまともな採用ページすらない。会社の雰囲気も、福利厚生も、どんな人が働いているのかも分からない。

その状態で「人が来ない」と嘆くのは、情報を出していない側の責任でもある。

今や「採用活動=ネット戦略」と言っても過言ではない。SNSで社内の様子を発信したり、動画で先輩インタビューを載せたりする企業は、実際に若いドライバーの応募を獲得している。逆に、そうした情報発信を一切していない企業は、求職者から見て“ブラック”に見えるリスクすらあるのだ。

実際の事例:SNSで採用に成功した運送会社

例えば、**「佐川急便」のグループ企業「SGムービング」**は、SNSやYouTubeを積極的に活用した採用活動を行い、ドライバーの新規採用を大きく伸ばした企業の一つだ。YouTubeチャンネルでは、社内の雰囲気や社員インタビューを公開しており、職場のリアルな情報を視覚的に発信している。これにより、求職者にとって安心感を与えるとともに、動画を見た応募者が「自分に合うかも」と感じやすくなり、結果として採用率がアップした。

さらに、InstagramやTwitterでは「働きやすい環境」や「キャリアパス」などを発信し、SNSを通じて求職者と双方向でコミュニケーションを取ることに成功している。このようなネット戦略により、伝統的な手法に頼ることなく、効率的な採用活動が実現している。

集客も、営業も、ネットなしでは動かない時代

そして集客。運送会社が仕事を得る手段も、今や大きく変化している。

昔は「顔の広さ」がモノを言った。しかし今は違う。ネット上で検索され、比較され、選ばれる時代に入っている。特に軽貨物やチャーター便、引越し・個配などの分野では、ネット広告やSEO対策が集客の鍵を握っている。

実際に**「アート引越センター」**では、SEO対策を徹底しており、Google検索結果で上位に表示されることで、多くの新規顧客を獲得している。彼らは、検索キーワードに合わせたコンテンツを作成し、顧客が求める情報を正確に提供している。そのため、「引越しを考えているけどどこに頼むか決めかねている」という人々に見つけてもらいやすく、サービスの質や信頼性を感じさせることができている。

さらに、Google広告を活用し、ターゲットとなる地域や顧客層に合わせて広告を配信することで、費用対効果の高い集客を実現している。

逆に、「紹介だけでやってるから大丈夫」と安心していた企業は、コロナ禍や大手再編の波で取引先を失い、慌てている現状もある。

ネットを軽視した結果、情報の海から発見されず、選ばれない会社になっているということに、もっと多くの経営者が気づくべきだ。

社員教育にもネットを活用する時代

さらに見落とされがちなのが、社員教育におけるネット活用の重要性だ。

「最近の若い子はマニュアルを読まない」と嘆く声も聞くが、それは紙のマニュアルや口頭指導だけに頼っているからだ。YouTubeや社内向けの動画マニュアル、LINEやチャットツールを使った共有体制があるだけで、教育効率は劇的に上がる。

「ヤマト運輸」では、社内教育にYouTubeを活用しており、新人研修や安全運転講習の動画をオンラインで配信している。これにより、研修の時間や場所に縛られることなく、全社員がどこでも学習できる環境を提供している。特にコロナ禍でのリモートワークが推奨される中で、オンライン教育は非常に有効な手段となっている。

とくに新人ドライバーにとっては、「分からないけど聞きづらい」が最もストレスになる。それを解消するには、いつでも見返せる・誰でもアクセスできるオンライン教育コンテンツの整備が必要だ。この部分の改善が、定着率アップにも直結してくる。

ネット活用の一歩を踏み出せるかどうかで、企業の未来は変わる

ネット戦略を“広告”や“デジタルの知識がある人だけがやるもの”と考えているうちは、変化は起きない。重要なのは、「ネットを通じて誰とつながるか」「どんな印象を与えるか」「どう情報を届けるか」という**“経営戦略の一部”として捉えること**だ。

  • ホームページが時代遅れ → 信頼されない
  • 採用情報がない → 応募が来ない
  • 発信がない → 存在しないのと同じ

今の世の中では、「ない=存在しない」に近い。これは、非常にシビアだが現実である。

最後に

このまま何も手を打たなければ、多くの運送会社が“いい会社なのに選ばれない”という状態に陥るだろう。一方で、少しずつでもネット活用を始めた会社は、確実に評価され、仕事も人材も集まり始めている。

時代に取り残されないためには、“ネットの力”を経営に取り入れる決断が必要だ。今がその分岐点かもしれない。

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